波頭亮『AIとBIはいかに人間を変えるか』そこに結論をもっていくなら…

波頭亮『AIとBIはいかに人間を変えるか』 そこに結論をもっていくなら…

AIとBIを繋げた議論をはじめて読んだのは井上智洋『人工知能と経済の未来』(文春新書)だったと思う。AIについては、汎用型のAIという概念にはじめて接して本当にそんなAIが出てくるのだろうかと訝ったものだ。AIの未来については別様のことを考えているので、ここでは触れない。本書のAIの議論についてはなにも新しい知見は無かった。

問題はBIの方だ。

最後の結論を「働かずに生きていける世界が実現したら」というのであれば、長々とBIの解説はいらなかったのではないだろうか。それも一貫した文脈ものではなく、それぞれの議論を繋ぎ合わせているので、議論のベクトルがちぐはぐになっている。

一番問題なのはBIに関する位置づけであり、社会保障とする考えだ。のちに社会保障ではないと議論を展開するのに生活保護や年金を持ち出す。

あらためて言っておこう。BIは社会保障ではない。あくまでBIはアベノミクスにかわる経済政策なのだ。そのことをまずはじめに確認しないから、議論がおかしな方向に行くのだ。

BI≠社会保障 BI=経済政策

社会保障については、別途議論が必要なのはいうまでもないが、同じではない。

また、この混乱は生活保護と年金をごちゃごちゃにしているところにもあらわれているだろう。生活保護は別に積立してきたから、いただけるというものではない。しかし、年金は25年から30年積み立ててきたものである。65歳を過ぎれればもらえるという契約で。これを一緒にしてはいけない。BIを差し上げるので年金もなしですよいうのは成り立たないし公正でない。年金をBIに差し替えようとするなら、積み立てた年金金額を返金してもらいた。またその30年という時間を返せ、ということになる。(個人だけではない、苦しいなかで従業員の為に企業が負担してきたのだ)。その前に年金制度は間違ってましたと謝罪すべきだ。

また、この混乱は、BIの財源論でも表れている。財源論についてはいろいろ議論の分かれるところだとも思うのだが、波頭は月8万円の支給を考えている。年間122兆円になる。この中から国民年金・基礎年金額22,2兆円、生活保護費1,2兆円、雇用保険の失業保険費1,5兆円をひく、また厚生年金の32,4兆円も充当するという。

122-22.1-1.2-1.5-32.4=64.7

兆円を考えればいいというのだ。

なぜ、年金を引くのかということは再説になるから言わないが、残りの64,7兆円を何で賄うのかという議論で、波頭は私案を述べるが、一番は消費税を8%から15%まで引き上げると言っている。しかし、後段でp-190「逆進性のある消費税増税ばかり進めてきた結果、格差と貧困問題が深刻化し、国民経済も沈滞するという悪循環の見本のような国家運営をしてきた」と指摘している。みずから悪循環と指摘するものをなぜ私案のなかに入れるのか、矛盾している、混乱している。消費税は逆進性だけでなく色々と問題がある税制であることは、あきらなのだ。むしろヨーロッパでは見直しの動きがるというのにどういうことなんだろう。

そもそも、波頭の到る結論が文脈だとするとこのような議論はいらない。むしろ、社会保障の議論は別途BI成立後に議論すべきなのだ。生活保護を縮小するのか、年金はどうするのか失業保険はどうするのかなどの議論だ。それらを事前に議論するから話がおかしくなる。

また、BIは経済効果としては3%から4%ぐらいというが、そんなもんじゃないだろう。爆発的に消費が拡大されることは間違いがないと思う。なぜって、みんな可処分所得が増えれば消費したいんだから。ほしいものがいっぱいあって……ともかく今使いたい人にお金が行くということは大切だ。BIとは国民への直接金融のことなんだから。

なぜ、しなくちゃならないのかというと新自由主義によるトリクルダウンなんて起きなかったからだ。格差がどんどん開いて貧困層が増大しているからだ。市場経済で解決できないなら、再配分経済によって是正すべきなのだ。

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