官足法と医学について

官有謀先生は医者嫌いで、亡くなる直前まで医者にかからなかったと聞いています。そこで死因は結局わからない状態だったようです。
ここで医者と言うのは、西洋医学の医者であって、中国医学ではありません。中医(中国医学のこと)にもかからなかったのかどうかは分かりません。何も語られていないからです。おそらく診察を受けなかったのでしょう。
官有謀先生が日本で活躍された1980年代中頃から90年代にかけての日本では、まだ東洋医学の立場は低く、「あん摩、マッサージ指圧師、はり師、灸師等に関する法律」が改正され、国家試験になったのが1988年でしたので、やっとその頃から認知度が上がったと考えられます。鍼灸師と柔道整復師だけが今のところ国家試験があります。
官足法とリフレクソロジーは国家資格まで持っていく意志がなかったのか、医療という領域まで立ち入っていくことはありませんでした。
それゆえに医療ではなく健康法と位置づけられています。そこで個人に対する手技は「施術」ではなく「個人指導」と表現しています。
法制上では、医療は国家資格のある医師が行うもので、資格のない者が行うと違法になります。
しかし、この法制度上の縛りを取っ払って考えてみるなら、西洋医学といえども治療困難な疾患もあって、それは近年ますます増えてきているように思われます。そこに補完療法としての東洋医学の出番がやってきているのです。また、科学的にそのメカニズムを解明するというところまで来ているのです。大学の医学部では漢方を取り入れた東洋医学も講義されるようになったと聞いています。
現在の2024年、その傾向はますます顕著になってきています。30年40年前の官有謀先生が活躍された時代とは大きく医療状況は変化しているということがわかるでしょう。
厚生労働省もすでに2012年に「統合医療のあり方に関する検討会」を始めています。この検討会の議事録は公開されているのですが、それを引用していては煩雑なので、山本高穂・大野智『東洋医学はなぜ効くのか』(講談社ブルーバックス)によると、その統合医療と言うのは、「近代西洋医学を前提として、これに相補(補完)・代替療法や伝統医学等を組み合わせて更にQOL(Quality of Life:生活の質)を向上させる医療であり、医師主導で行うものであって、場合により多職種が協同して行うもの」と説明されています。あくまで医師の指導のもとで行うものだという縛りはしっかり持っているのです。そしてこの議論の過程を図表にしてくれていますが、様々な療法の中で残念ながら官足法は入っていないようです。
ですが、この本は現在の東洋医学と西洋医学の関係の最前線を端的に示していると思われる本です。特に鍼灸のメカニズムを科学的に解明されつつあるのです。この事はそのまま官足法の原理につながる大きなヒントを与えてくれることになると考えられます。

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